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阿蘇谷地下貯水池計画

概要

豊富な阿蘇谷の雨を水資源として活用できないかと、早くからさまざまな団体や企業が研究や調査を行っています。昭和31年(1956)に、九州電力が熊本大学に依頼して実施した「阿蘇谷地下貯水池計画」調査もその一つです。
立野にある九州電力黒川発電所の発電量を上げるため「阿蘇谷の地下水をあちこちでポンプで汲み上げ、それを集めてタービンを回して発電するなら、やりようによっては採算ベースに乗るのではないか」というのが同社の狙いでした。
この調査は『阿蘇谷地下水開発調査研究報告』としてまとめられました。

  1. 県計画の外輪山流域変更は経済的に成り立たない。
  2. 阿蘇谷平地部の地下水圧を減じて湿田開発を行うべきである。
  3. 地下水の開発は極めて経済的である。しかし実施に際しては、さく井数を3つに分け、段階的に行い、科学的調査を並進せしむべきである。
  4. 黒川第一発電所は所要の調査能力を与えるため、調整池の拡張を行い、ピーク発電を強化し、できればさらに21,000㌗の新発電所を増設すべきである。これと同時に河道の整備を行って調整池付近の水害を著しく軽減しうることに留意すべきである。
    (5~10略)
    この計画は、結局、経済性の問題などから実現には至りませんでした。しかし、戦後のこの時代は食糧増産の時代でもあり、また、電力不足でローソク送電などが行われていた時代で、電源開発もまた時代の要請でした。
    当時、阿蘇谷は、地下水位も高く湿地や湿田が多く存在していました。そのことが、生産性向上の大きな障害となっていました。
    地下水を汲み上げることによって、湿地の乾田化を進め揚水した地下水で発電することは一石二鳥の計画と言えます。また、詳しい水文地質学的調査の結果出された結論ですが、実際の事業実施にあたっては、段階的に行い科学的調査との並進を強調されるなどは評価すべきことです。そして、この調査によって阿蘇谷周辺の地質や帯水層が専門的に解明され、阿蘇谷の水文や地質を解明する基礎資料になったことの価値は大きいです。

参考

阿蘇一の宮町史 阿蘇山と水

カテゴリ : 阿蘇の自然
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