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阿蘇火山のマグマ
更新日: 2015-08-25 (火) 17:37:20 (3138d)
概要
阿蘇-1から阿蘇-4にわたる阿蘇火砕流活動期の岩石はカリウムを多く含む科学的に明瞭な性質をもっています。このような特徴は阿蘇火砕流活動期以前の岩石である「先阿蘇火山岩類」や、すぐ隣にある九重火山の岩石とも明らかに異なっています。九重火山は、その中心が阿蘇火山の中心から北東にわずか25㌖しか離れておらず、およそ15万年の長い間、阿蘇火山とほとんど並行して活動しています。さらに、阿蘇火山の西にある金峰火山と雲仙火山の岩石の組成も、阿蘇火山の岩石の性質とは似ていません。
造岩鉱物について見ると、火砕流活動期の岩石には雲母や角閃石が少なく、阿蘇-4の岩石は少量の角閃石を含み、塩基性岩石には、かんらん石を含むものの、共通して輝石を産します。このことは、九重・金峰・雲仙などの各火山が、多量の角閃石にしばしば黒雲母を伴う、いわゆる角閃石安山岩を多産することと著しく対照的です。このようなマグマの性質は、カルデラ生成後の中央火口丘群のマグマの性質とも共通しています。
阿蘇火砕流噴火サイクルの噴出物には、各噴火サイクルごとで組成に幅があり、阿蘇-2から阿蘇-4のサイクル中の組成変化は、大まかに初期の酸性から後期の塩基性へと変化します。これは地下のマグマ溜まりでは上部にに酸性のマグマ、下部に塩基性のマグマが存在し、上から順に噴出したためと考えられます。阿蘇-3は最も典型的で酸性の降下軽石・火砕流から、中性・塩基性の火砕流へと変わります。阿蘇-2は安山岩質の噴火で始まることと、大規模な火砕流噴火の最末期にかなり大量の降下スコリアがあることなど、1サイクルの活動としてはやや特異な経過をたどっています。また、阿蘇-4は流紋岩から塩基性安山岩へのよく似たサイクルが2回繰り返されています。阿蘇-1では組成の幅が小さい。
中央火口丘群のマグマの化学組成には、SiO2含有量49%から72%まで大きな幅があります。噴出物はその幅の中で平均的に分布するわけではなく、SiO2 52-54%と67%付近で産出頻度が高い。しかもカリウム富む性質を持っており、この性質は阿蘇火砕流活動期のマグマの性質受け継いでいます。造岩鉱物に関しても同様です。
約27万年から現在に至るまで、マグマの科学的な性質が受け継がれています。このことが阿蘇火山を一つの連続した火山活動として認めている根拠です。中央火口丘群の岩石が多様である理由については明らかではないが、一つの可能性として次のように考えることが出来ます。阿蘇-4火砕流噴火後、マグマ溜まりは、天井が陥没することによって分割されました。分割された各部分は天井の破砕部分を上昇して独立した煙突状の溜りを形成しそれらの中でマグマが独立の分化をするようになります。このようにして中央火口丘群の各火山又は火山のグループの下に小型のマグマ溜まりが存在するようになったと推察されます。
参考
阿蘇火山の生い立ち
索引 : あ
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