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阿蘇溶結凝灰岩

概要

大規模な火砕流堆積物は、一般に多量の火山灰と軽石などがほぼ均一に混じり合ったもので、堆積時に低温であれば「シラス」と呼ばれる非溶結の堆積物となります。堆積物がしばらく高い温度(約700度以上)を保っていた部分は、「溶結凝灰岩」と呼ばれる特徴のある岩石となります。「溶結」とは、高温のガラスどうしくっつくようなものです。すなわち溶結凝灰岩は、高温の軽石、スコリア、火山灰などが堆積後くっつきあって生じた岩石のことを指します。
火砕流堆積物に含まれる本質物の軽石やスコリアは、高温であれば溶結し合うだけでなく、堆積物の重さによって気泡がつぶされて円盤状になります。堆積物の断面を観察すると、扁平なレンズの断面のように見えるので「本質レンズ」と呼ばれています。また、本質レンズを取りまく火山灰は肉眼では均一に見えるので、「基質」または「マトリックス」と呼ばれています。マトリックスをつくっている火山灰には、本質、類質、異質の物質が混合しているのが普通ですが、大部分は軽石やスコリアの粉砕された本質火山灰です。類質岩片や異質岩片は変形することなく、角礫として堆積物中に含まれています。
溶結度は、一般に堆積物の基底から上に向かって、非溶結部、下部から中部の強溶結部、上部の非溶結部へと変化します。非溶結部と強溶結部との間には中間的な弱溶結部があります。溶結部は冷却して収縮するため、柱状節理が発達しています。このような溶結凝灰岩の崖は、浸食される時に岩石が柱状のまま剥がれ落ちるので、その後も鉛直に維持される場合が多い。従ってしばしば滝をつくっており、カルデラ壁の上部やカルデラ周辺の河川沿いの谷で観察されます。蘇陽峡、菊池渓谷、宮崎県の高千穂峡も阿蘇火砕流堆積物の溶結凝灰岩から成ります。
火砕流堆積物は一般には堆積した後は流れることはありません。しかし、特に高温の部分は溶結が進むにつれて、谷の中心部や低い方に向かって多少ずり落ちるように流れることがあります。
このような流れを、火口から直接流れ出た溶岩の流れと区別して、二次流動と呼んでいる。カルデラ西側一帯の阿蘇-2火砕流初期の噴出物では、溶岩流との区別が困難なほど大規模な二次流動現象が認められます。
二次流動をを起こした溶結凝灰岩では、本質レンズが引き伸ばされた構造や、岩体が引き裂かれた「プル・アパート構造」が見られます。プル・アパート構造は高温時にできるので、引き裂かれた壁面から本質レンズが絞り出される現象なども認められる場合があります。

参考

阿蘇火山の生い立ち

カテゴリ : 阿蘇の自然
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