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長い名前

民話

長い名前

 阿蘇の或る村に、働きものの夫婦が住んでおりました。

長いこと子供がなかったのですが、やっと男の子が生まれて、二人は大そう喜びました。

「長生きするごつ、長い名前ばつくっとよかばい」

そう思って

「一九四九郎(いちくしくろう)、忠四九郎(ちゅうしくろう)、忠四郎別当(ちゅうしろうべつとう)、忠三郎(ちゅうさぶろう)、八八兵衛(はちはちべえ)、八兵平(はちひようへい)、十徳兵衛(じつとくべえ)、三兵平(さひようへい)」

と、知っている名前を並べたててみました。

「どの名前もよかごたる。さて、どれにしたもんか」

と、迷っていましたが、いっそのこつ、全部にしよう、ということになりました。

ちょうどその時、馬のいななきと、猫や、にわとりの鳴き声が聞こえてきたので、

「そうそう、これもいれようばい」

といって、

「ヒン、ニャン、ワン、コケコッコ」

まで加えることにしたのです。

夫婦は、大そうこの子をかわいがって育てました。

近所の子供達と遊ぶようになって、或る日のこと、この子が、川に落ちこみ流されて行きました。

友達の一人が

「一九四九郎忠四九郎忠四郎別当忠三郎八八兵衛八兵平十徳兵衛三兵平(いちくしくろうちゅうしくろうちゅうしろうべつとちゅうさぶろうはちはちべえやひようへいじつとくべえさひようへい)ヒコニャンワンコケコッコしゃんげに行って、一九四九郎忠四九郎忠四郎別当忠三郎八八兵衛八兵平十徳兵衛三兵平ヒンニャンワンコケコッコしゃんが、川に落ちて流されたこつば知らせて来なっせ」

と言いました。

友達がまた家に行って、長い名前を言った後、急を知らせました。

そうこうしているうちに、長い名前の子供は、川下の方へどんどん流されて行ってしまったと言う事です。

参考

くらしのあゆみ 一の宮 -一の宮町 伝統文化研究会-
 高橋 佳也


カテゴリ : 文化・歴史
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