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田植え地蔵

民話

田植え地蔵

 昔々あその田舎に大変働きもんのお百姓さんがおんなはったちったい。

毎日畑や田んぼで一生懸命働きよったと。

田んぼにいく途中にお地蔵さんが祀ってあったとき、いつも生き帰りにお花をあげち、お参りして深く信心しよんなはったと。

 或る日朝早よかる田んぼの田植えをしてせっせとがまだすばってん、ちっとんはかどらんでもう暗うなりかけたちったい。

「困ったな、今日中に植えにゃならんとにどうしたもんか。」

ち、ひとりごとば言いよったとこるが、どこかるか一人のじいさんが出てきて側まじ来ると

「わしが手伝ってやろう。」

ち言うて、苗をさっさと取ると、田んぼに植え始めちったい。

その早えこつ、早えこつ、長年田植えをやりよるお百姓さんもたまがる早さじ、みるみる田んぼ全部に苗を植えしもうたちったい。

「おじさんな、一体どこんお人でしゅか、たまがりましたばい。ちょうじょうあーた。ありがとうございました。」

とていねいにお礼を言って頭を下げたばってん、おじいさんは何も答えはせんでニッコリ笑ってすたすたとどこかに消えてしもうたちっ
たい。

 お百姓さんな一時ぼんやりと立つちょたばってん、だんだん暗くなったき、道具を片付けち、帰る途中いつもんごつ地蔵様にお参りし
たと。

じっと目をつぶっておがみ、目をあけち見ると、お地蔵さんのすそが、泥でよごれちょるとが目についたと。

「そうじゃったか、あれはやっぱりお地蔵さんじゃったつばいなあ。」

何度も何度も頭を下げたちゅう話たい。

 そりからこの地蔵さんを「田植え地蔵」と言って村人に大事にされたちゅうこつたい。

モシモシ米ンダンゴ早ヨ喰ワニャ スエル。

参考

くらしのあゆみ 一の宮 -一の宮町 伝統文化研究会-
一の宮宮地 小野 時枝


カテゴリ : 文化・歴史
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