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新町建設計画(一の宮町)

計画

新生の一の宮町が合併後5年をかけて実施したいと考えた街づくり事業は、以下の様なものでした。

  1. 合併地域の不便さを取り除くための施策として、機動性のある消防体制、道路整備、電話架設、町営バス事業
  2. 合併一体感を高揚するばとして、体育施設、総合グラウンド、公民館、中学校増築、総合病院
  3. 土地改良、牧野改良、農事奨励
  4. 産業新展開の模索として温泉掘削、公設市場

このうち国庫補助のついた事業については一定の成果がありましたが、町の自主事業については補助の規制がないだけに進退の自由があり、実働に至らなかったものや中止となったものなども生じました。

町村協定事項

町村協定事項は9項目から成り

  1. 職員の取扱い
  2. 新役場の機構
  3. 町村議員任期
  4. 駐在員区(新町の行政区画)
  5. 大字区変更
  6. 農業委員
  7. 古城村国民健康保険
  8. 町民税滞納
  9. 旧町村財産処分

でした。
旧町村の役場職員については、町村長ら3役は退職、職員はすべて新町職員とし、旧村には当分出張所を置き、旧議員は任期を一年延長することで合意されていました。また、農業委員会、健康保険も特例存続となり、町税滞納は80%を目標に徴収努力を行うと申し合わせていましたが、結局問題となったものは旧町村の財産をどうするかということでした。旧村役場庁舎や敷地などの行政財産の新町引き継ぎについては異論は出ませんでしたが、この4ヶ町村では、各町村が所有し、育成してきた共有山林、共用原野の面積の差がありました。
これらを全て新町の町有財産に吸収することは既得権者の側に不平等である故の抵抗感があり、一方で新町が旧町村の町有財産を引き継ぐことが出来ないということも基本財産確保・育成を目標の一つとする町村合併の方針に合わないことです。協議会案は旧町村の権利を財産区設定という形で残すとともに、新町の基本財産として、財政計画遂行に必要なものとして、旧町村は、山林時価最低額の2分の1の額を基準に、山林を人口比率で新町に引き継ぎ、残りは財政区とすることで調整し、さらに調整を行ないました。
また、坂梨村では合併前には簡易水道を施設して低額の水道料でまかなっており、今後の新町の水道設備により負担が大きくなることをおそれ、財産区設定を主張し認められました。
このように新町村建設計画は、今後全国一定水準の規模と行政能力を有する地方自治体を育成しようとする国家政策が求めたものであり、町村協定事項は、合併される旧町村が、生活とかかわる再生産の伝統的権利をどれだけ確保できるか調整した場でした。
極論すれば、この町村合併において、国は過去の伝統に不信をもって未来の発展を求め、地元では未来の発展に不安を残し、過去の権利の温存を求めたといえます。

参考

阿蘇一の宮町史 戦後農業と町村合併

カテゴリ : 文化・歴史
索引 :

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