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彦しゃんの餅盗み

民話

彦しゃんの餅盗み

彦しゃんが、うちが貧乏で正月が来たっちやお餅がぜんぜん搗けん。

どぎやんしたら良かろうかちて、いっしょうけんめい考えよったとこが、ようしつけんなら、俺が良か知恵があるばい。

町に食紅ばその買いい行って、そして近所んえら金持ちのうちがボッタンボッタン、幾日も幾日も餅を搗くけん、そこん餅を搗いたそん晩、こつそりそのうちに入って行って、そしてその食紅ば、搗いてもろ蓋に並べてある餅に食紅ばべーッと皆、餅の頭の上のとけ付けちもうて、それから翌朝、彦しゃんな知らんふりしてから、そこうちい行たとこが、そんうちの人は昨日搗いた餅が真っ赤になっとるけん、

「どうしたこつちやろか」

ちゆうて心配しとるけん、

「こらあ、そのおそらく何か毒が吹いたっちやなかろうか。知らんと食たら死にやせんどか」

ちか、皆えら大騒ぎしよるところへ、その彦しゃんが行って、そして、

「はあ、そりやまあ何か、昨日こん近所の稲荷さんの狐かなんかが毒ばつけたつばい。

そぎやん餅どん食たなら、そりやあもう皆が家中ん者は死んでしまう。

そらあ私が持ってどっか川か山ん方にいっちょ捨てに行ってあげましっしゆう。」

で、その餅ば全部彦しゃんな袋ん中にもろち、やっさやっさとうちに持って帰つち、そん餅で正月を過ごしたちゆう。(通観七一五 餅に足跡)

参考

くらしのあゆみ 一の宮 -一の宮町 伝統文化研究会-
一の宮町宮地 岩永 寿(出典:関西外国語大学 三原研究室 阿蘇山麓の口承説話より)


カテゴリ : 文化・歴史
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