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善五郎谷(ぜんごろうだに)
更新日: 2010-03-20 (土) 16:37:08 (5144d)
阿蘇の中岳(なかだけ)の中腹(ちゅうふく)に「イ」の文字の形をした谷があり、「善五郎谷」と呼ばれている。この谷の下に蔵原(くらばる)という村がある。昔、そこに善五郎と彦四郎(ひこしろう)という働き者がいた。
ある日、二人はこの谷の方に柴刈(しばか)りに行った。柴を刈っていると、谷底に何やらキラキラ光っているものがある。良く見ると、どうやら金の鑵子(かんす)(湯沸かし器)が二つ並べて置かれているようである。二人は大喜びで、柴刈りなどそちのけで荷(に)縄(なわ)をはずし、準備して鑵子を取りに降りることにした。彦四郎が先に
「俺が降りて見る。」
と自分の体をしっかりと縄で縛り、縄の端を善五郎が引っ張って、岩角を足場にして少しずつ谷底に降りていった。
すると、金の鑵子だと思っていた光る物は、実はどぐろを巻いた大蛇の目玉であった。それと気付いた彦四郎が悲鳴(ひめい)を上げると、大蛇は鎌首(かまくび)をもたげ彦四郎を一飲みにしようと襲(おそ)いかかってきた。
「善五郎、はよ縄を引け。大蛇に飲まるるぞ。」
と必死に叫んだので、善五郎も驚いて懸命(けんめい)に縄をたぐりあげた。彦四郎は、やっとのことで逃げることができた。
それ以来、この谷を善五郎谷というようになった。今も蔵原の杉林の中に、善五郎屋敷(ぜんごろうやしき)や墓所(ぼしょ)がある。
参考
索引 : ぜ
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