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古野とネザサ

概要

阿蘇郡内でも北外輪の溝辺原野はネザサが多く繁殖し、土地生産性が低い地域です。
ここでは干し草の刈り取り量が一年おきに大きく変わります。地下茎に十分な貯蔵養分が蓄えられる前に地上部が刈り取られたため、刈り取った翌年は貧弱な芽立ちになるからです。
そこで、草原の生産性を回復させるために、1年間は刈り取りをやめて休養を与えます。この休止状態の放任された草地を、地元では「古野」と呼んでいました。
古野は2年に1度の採草利用でした。これで草原の退行を防ぎ、永続的に採草可能な安定した草原を維持してきました。

一斉開花

ところが平成4年5月上旬、北外輪山の広域にわたってネザサが一斉に開花し、その後、結実して枯死する現象が起りました。昭和45年頃にも局地的に開花現象があったと伝えられますが、性格な記録は残されていません。
ネザサは阿蘇の自然草地に広く分布し、茎葉は牛馬の嗜好性も良いので粗飼料生産の基盤として重要な植物です。
それだけに、ネザサの枯死は干し草の生産量を減退させ、放牧地の牧養力を低下させる危険性があります。また、ネザサは地下部の発達が優れ、地下ではちょうど鉄筋コンクリートの鉄筋のような働きをして、草原の火山灰土壌の保全に役立っています。そのため、このネザサの枯死によって草原の表土流出も懸念されました。
平成4年のネザサの開花面積は、阿蘇町と一の宮町の外輪山地域を中心に2,157㌶。ネザサの種子は粒の張りがよく大型の小麦状態で
、地方によっては「野麦」と呼ばれ、飢餓のときには救難食糧として利用されていました。ネザサの種子重量は1平方㍍あたり91㌘。これを10㌃当りに換算すると91㌕となり、普通の水筒収穫量の20%近い値になります。また、開花した面積全体でみれば1,963㌧になり、玄米33,000俵に相当します。
ネザサ開花の原因には諸説あり、開花周期も俗に60年説といわれていますが、現在のところ明確な答えは出されていません。阿蘇市内牧では平成4年の開花時にネザサの種子を掃除機で集め、製粉後蒸しだんごにして食しました。


カテゴリ : 阿蘇の自然
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