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半自然草原

概要

半自然草原とは

草原を利用目的で見るときには草地と呼ぶが、阿蘇の草原はそのほとんどが牧畜に利用されています。国道57号線から阿蘇登山自動車道を登って行くと、左手(東側)にお椀を伏せたような整った形の米塚(954.3メートル)が見えてきます。全山がススキやネザサに覆われていて一帯は牛馬の飼料用の貴重な採草地になっており、特にススキは粗タンパク質の含有量が多く(平均8.8%)、栄養価が高いので牛馬の飼料に適しています。

ススキとネザサを中心とする草原は、阿蘇から九重にかけて広がる草原の大部分を占め、その広さは、九州の植物界では屋久島(鹿児島県)の屋久杉と同じくらい貴重です。
そもそもネザサそのものが日本固有種で、世界的にも他に類例のない特殊な植物群衆なのです。
新しい火山灰土にはまずススキが侵入、植物に有害な硫化物が溶脱し、やや古くなった火山灰土ではネザサも生育するようになります。古くなった火山灰土ではススキ、ネザサのほかにも阿蘇固有のハナシノブツクシマツモト、日本では阿蘇からくじゅうにかけてしか分布が知られていないヤツシロソウツクシシオガマなど、植物の進化、分布上から貴重な種類も数多く生育しています。採草地(長草型草地)では、隔年ごとの野焼きにより、火に弱い低木の生育が抑えられて良い草原の状態が維持されてきました。

シバ群落は、牧草地特有の植物群落で、東北地方の放牧地などでもおなじ群落がみられます。シバ群落が良い状態に保持されるためには適度の放牧が必要で、阿蘇やくじゅうでは通常10ヘクタール当たり牛15頭だとシバ型草地が保持され、6~10頭ではササ型になり、さらに、5頭以下ではススキ型になります。反対に15頭より多いと過放牧になり、オオバコ型になってしまうといわれています。また放牧の管理が悪く土壌の酸性化が進行すると牛馬が食べないワラビが繁殖するようになります。

草原を放牧地として利用するか、それとも採草地として利用するかは、火山灰の降灰量が大きく関係しており、偏西風帯にある阿蘇では年間を通して西寄りの風が卓越するため、中央火口丘だけでなく、東外輪山でも降灰の影響を強く受けます。そのような地域ではススキが優占し、仮に放牧が強化されてもワラビよりシバが優占します。
阿蘇の半自然草原は、このように採草地にしろ、放牧地にしろ、火山地域の風土に合った長年にわたる人為の微妙な調和によってそれぞれの地域の植物相も維持されてきているのです。

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ワラビ型草原


カテゴリ : 阿蘇の自然
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