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うそつきうそ助

民話

うそつきうそ助

 むかし、阿蘇山のふもとのある大地主の家に、うそ助という下男がいました。
 うそ助は名前のとおり平気でうそをついていました。

 ある日、うそ助は主人の命令で山に草とりにいきました。一日中、山で木の実をとったりして遊んでいたので、何も持って帰りませんでした。うそ助は、「山でわしの巣をさがしていたから薪はとれませんでした。その代り大きなわしの巣をみつけました。」といいわけをしました。主人はわしの巣がほしかったので、ほんとうと思い、翌日、うそ助を連れてわしの巣とりに山にいきました。
 主人は昨日みつけたという松の大木にうそ助を登らせましたが、もともとうそだからあるはずがありません。うそ助は木の頂上に登って困ってしまいました。とっさに、またうそをいい「やあ、ここからよく村がみえます。おや、大変だ。大変だ。うちが火事です。」二人は山から走って帰りました。しかし、村も主人の家も何ごとも起こってはいませんでした。

 かんかんに怒った主人は、ほかの下男たちにいいつけて、うそ助を空俵(あきだわら)に入れて川に流しにやりました。町をとおりかかった時、うそ助がいいました。「私はもうすぐ川に流されて死にます。死んだらお金はいりません。ここに金がありますから、お酒でも飲んでつかって下さい。」下男たちは喜んで道ばたに俵をおいて酒屋に入っていきました。
 ちょうどその時、めくらが通りかかって杖で俵にさわりました。うそ助は、「今、私はこの俵の中で目の治療中ですが、もうすっかりよくなりました。この俵はふしぎな力があって、どんなめくらもみえるようになるのです。」
 目がみえるようになりたい一心で、何も知らないめくらはうそ助と代って俵の中に入りました。うそ助は俵を結ぶと、さっさとどこかへ行ってしまいました。
 酒によっていい気持になった下男たちは、鼻歌まじりで大川の方へその俵をかついでいきました。おどろいためくらがどんなに叫んでも、下男たちは、うそ助が助けを求めてもがいているものだと思いこんできいてくれません。そして、大川にその俵を投げ込んでしまいました。

 それから2、3日たった時、うそ助はさかなやお酒やごちそうをたくさん持って主人の所へもどってきていいました。「私は、あの俵にのって竜宮というところにいってきました。竜宮はきいたくらいではわかりません。行ってみると、もっともっとたのしい所です。これは乙姫さまからのお土産です。」「そんなにたのしい所なら、私もぜひ一度行ってみよう。」と主人はいいました。
 翌朝、うそ助ともう一人の下男は、主人の入っている俵を川に運んで流しました。
 その後、うそ助はその地主の家の主人になって幸せにくらしました。

参考

くらしのあゆみ 一の宮 -一の宮町 伝統文化研究会-


カテゴリ : 文化・歴史
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